75mmという画角はどうなんだろう?意外に使いやすい

JUPITER-3 50㎜ f1.5

50㎜のレンズは「標準レンズ」と呼ばれていて、初心者が最初に手にすることが多いイメージがあるかもしれない。実際、私も一番最初に使った一眼レフには50㎜のレンズが付属していて、特にこだわりもなく、そのまま自然に使っていたのを思い出す。写真を始めたばかりの頃は、そのレンズが特別だとも思っていなかったし、他の選択肢について深く考えることもなかった。

でも、今あらためて50㎜のレンズを振り返ってみると、その魅力はかなり大きいと感じる。まず何よりも、価格が手頃で手に入れやすい。そして本体がとてもコンパクトで軽いので、持ち運びが楽で、気軽にカメラを持ち出す気分にさせてくれる。さらに、F値がそれほど明るくなくても、背景がしっかりとボケてくれるので、被写体が際立ち、印象的な写真が撮れる。

開放F値の明るいモデルなら、さらに美しいボケ味が楽しめるし、ちょっとしたスナップからポートレート、テーブルフォトまで幅広く活躍してくれる万能レンズだ。初心者向けというイメージを超えて、ベテランでも一本は持っておきたい、まさに基本にして最強の一本だと思う。

JUPITER-3 50㎜ f1.5
JUPITER-3 50㎜ f1.5

しかしながら、デジタルカメラの世界で50㎜レンズを「標準画角」として使うためには、フルサイズのカメラを用意する必要がある。ところがこのフルサイズ機というのは、どうしても価格が高くなってしまうため、なかなか手を出しにくいと感じる人も多いだろう。

やはり今でも一番ポピュラーで使いやすいのはAPS-C機だと思う。ただ、APS-Cの場合、センサーのサイズの関係で画角が1.5倍になってしまう。つまり50㎜のレンズを使うと、実質的には75㎜相当の画角になり、これは一気に望遠寄りになってしまう。その結果、標準レンズとしてのバランスの良さが失われてしまい、構図を取りにくいと感じる人も少なくないはずだ。

最近ではオールドレンズの50㎜に味のある良いレンズが多く、しかも驚くほど手頃な価格で手に入ることもある。だからこそ「使ってみたい」と思う人も多いはずなのに、APS-Cとの相性を考えると、結局思ったように使えず、もどかしい思いをしている人もきっと多いのではないだろうか。

JUPITER-3 50㎜ f1.5
JUPITER-3 50㎜ f1.5

私もずっと同じように感じていたのだが、最近ふと思い立って、JUPITER-3 50㎜ f1.5 をAPS-Cのカメラに付けて撮影してみた。

このJUPITER-3というレンズ、驚くほど軽くて、確か150gほどしかなかったと思う。そのおかげで、APS-C機と組み合わせると非常にコンパクトで扱いやすく、持ち運びにもぴったりなセットになるのだ。

JUPITER-3 50㎜ f1.5
JUPITER-3 50㎜ f1.5

実際に使ってみると、これが思った以上に面白い。APS-Cでの50㎜は75㎜相当になるので、確かに被写体を選ぶ必要はある。スナップのように何気ない瞬間をサッと撮るには少し難しいと感じる場面もあるが、その分、構図をじっくり考えるようになり、撮影そのものに集中できる感覚があった。

普段あまり使わない画角ということもあって、新鮮な気持ちでシャッターを切れるのが楽しい。少し距離をとって被写体を見つめ直すような感覚があり、日常の中に新しい視点が生まれるような印象を受けた。

さらに、完成した写真を見ると、自分の目で見ていた光景とはどこか違った雰囲気が立ち上がってくる。そのズレがとても興味深く、レンズを通して初めて見えてくる世界にワクワクさせられる。これは、この画角ならではの魅力かもしれない。

JUPITER-3 50㎜ f1.5
JUPITER-3 50㎜ f1.5
JUPITER-3 50㎜ f1.5
JUPITER-3 50㎜ f1.5

こうした少し非日常的な画角を使っていると、いつもの風景や被写体でも「どう切り取ろうか」と考えるようになって、結果として表現の幅が広がっていくような感覚がある。今まで気にも留めなかったような背景のボケ方や、被写体との距離感にも敏感になってくる。

JUPITER-3の持つ独特な描写、少し柔らかくてクラシカルな写りも相まって、ただ記録するだけではない“撮る楽しさ”を再確認させてくれた。しばらくはこのレンズをAPS-Cにつけておいてみよう。

JUPITER-3 50㎜ f1.5
JUPITER-3 50㎜ f1.5